災害避難者の人権ネットワーク

Network for Human Rights of Disaster Evacuees  

カテゴリ: 状況判断とはなにか

東洋経済 ONLINE (2020年5月10日)
「PCR抑制」日本が直面している本末転倒な現実
山梨大学学長「不十分な検査体制は日本の恥」
https://toyokeizai.net/articles/-/349413?fbclid=IwAR1rQi3ZohKw7F59zgMNhJb-Q8y4fszw6PaP-Kod_wKeijVb7YL46vDQh3U
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記事のアドレス http://starsdialog.blog.jp/archives/82942675.html

幻冬舎新書 513
https://www.gentosha.co.jp/book/b11951.html
ISBN978-4-344-98514-8
2018 年 9 月 30 日 第一刷発行

 
哲学対話をテーマにしているが,いわゆる哲学用語は出てこない。非常に読みやすく,わかりやすく,納得できる本であると感じる。あえていえば,いまの日本人に必要な本ではないだろうか? たしかに「もっともっとまずいことが起きている」のだから。
著者は,知識としての哲学ではなく,体験としての哲学を提示する。2012 年夏,ハワイで「子どものための哲学」(Philosophy for Children,略称 P4C)の授業を実践している高校と小学校の授業を見学したことがきっかけだという。著者は「考えるということがどういうことか,人に問い,語り,人の話を聞くということがどういうことが,私自身はじめて分かった気がした」という。さらに,「考えるということを起点として社会の中にあるいろんな問題が見えてきたのだ。しかもそれは社会の限られたところにある特別な問題ではない,そこらじゅうにあって,しばしば気づかないぐらい私たちの内奥に食いこんでいるだ。それは「考えるって楽しいね!」とか,哲学は好きな人だけやっていればいいのだという,呑気な話ではない。もっともっとまずいことが起きている。」と注意をうながす。
そして,問う・考える・語る・聞くという哲学のプロセスを自分自身でも,また他人との関係でも実践できることで,あたらしい展望をひらく可能性をしめす。第 4 章ではその具体的な実践手法を提案している。

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(感想,8月12日修正)
書名の「禍機」という語は,現代日本ではほぼ使われていないのではないだろうか。ここでは「わざわいの時代」というような意味かとおもわれる。この書名は著者の恩師でもある坪内逍遥が名づけたそうである。

この本が注目されるとすれば,福島原発事故の国会事故調査委員会報告書の冒頭で黒川清委員長が,この本を引用していることが関係しているかもしれない。すなわち,福島原発事故とそれが残す負の遺産は,いまから 110 年前に朝河貫一博士が残した警告を日本社会が生かすことができなかったために起きた「わざわいの時代」に当たると考えられる。
この本は,ひとことでいえば明治の世界的歴史学者が祖国の未来を心配して書いた歴史書でもあり,哲学書でもあるといえそうだ。内容は世界史的,地球規模の広い視野で書かれており,とても全体の紹介はかなわない。著者はその真髄を「武士道と愛国心」というキーワードに集約しているようなので,ここではテーマをしぼっておきたい。
 
今の日本で「武士道」や「愛国心」といえば,「昔のことすぎる!」とか「全体主義,軍備増強の準備やないの?」とおもわれそうだが,かれは単に封建時代の先祖から受けつぐ,完成され,固定された思想としてでなく,認識や思考の方法としての哲学をそのなかに構成する体系としているところが独創的といえる。
これは時代にあった哲学の提示方法であっただろうと推測できる。ひとつは,この本が出版された明治 42 年(1909)には,武士道と愛国心は国民の中核的価値観という位置にあっただろうと推測できること,また著者は明治 6 年(1873)の生まれであり,父・正澄は二本松藩士として明治元年から 2 年にかけての戊辰戦争を経験した武士であり,著者自身もその環境のなかに育ったはずだから,武士道や愛国心は他人から押しつけられる知識ではなく,まさに自分の生育環境そのものだったともいえそうである。
戊辰戦争は,戦後も長く会津の人々に大変な苦難を与えたと伝えられるので,武士道と愛国心の意味やありかたは,東北の,とくに武士階級の人々にとっては,自分の人間としての生き方の問題としてずっと尾をひいたであろうとおもわれる。

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「100 年前からの警告 福島原発事故と朝河貫一」
著者: 武田 徹,梅田秀男,佐藤博幸
発行: 花伝社 発売: 共栄書房
http://www.kadensha.net/books/2014/201405hyakunenmaekarano.html
2014 年 5 月 15 日 初版第 1 刷発行
ISBN978-4-7634-0701-6

「一時の国利と 100 年の国害 福島が生んだ知られざる巨人・朝河貫一が問いかけるもの」というのは表紙の帯のメッセージであるが,福島原発事故の背景に,日本人特有の精神的社会的問題が存在することを分析しようとする本であり,説得力のある内容と感じられる。
2012 年 7 月 5 日に国会事故調査委員会報告書が出され,その冒頭に,黒川清委員長が朝河貫一とその著書「日本の禍機」を紹介して深い警告を発している。
「100 年ほど前にある警告が福島が生んだ偉人,朝河貫一によってなされていた。朝河は,日露戦争に勝利した後の日本国家のありように警鐘を鳴らす書「日本の禍機」を著し,日露戦争以後に『変われなかった』日本が進んでいくであろう道を,正確に予測していた。
『変われなかった』ことで,起きてしまった今回の大事故に,日本は今後どう対応し,どう変わっていくのか。これを,世界は厳しく注視している。この経験を私たちは無駄にしてはならない。国民の生活を守れなかった政府をはじめ,原子力関係諸機関,社会構造や日本人の『思い込み(マインドセット)』を抜本的に改革し,この国の信頼を立て直す機会は今しかない。この報告書が,日本のこれからの在り方について私たち自身を検証し,変わり始める第一歩となることを期待している」
外国人向けに作られた国会事故調エグゼクティブ・サマリーには,日本語版の「はじめに」とは異なる次の文が含まれている。
(英文略)
(誠に残念であるが,今回の事故は「日本製」の災害であると認めざるをえない。その根本的な原因は,日本文化に深く根付いた数々の慣習に見いだすことが出来る。すなわち,条件反射的な従順さ,権威に疑念を抱くことへのためらい,「あらかじめ設定されたこと」の忠実な実行,集団主義,そして,島国根性。今回の事故に責任を負う立場に,別の日本人が就いたとしても,結果は同じだったかも知れない。)(本書「はじめに」より。引用ここまで)

小生の読後感としては,上記の指摘が本書の核心であるように感じられる。原発事故の背景には,時代の変化があるとしても戦前からつづく教育統制,報道統制,政党,労働組合,市民団体に対する監視,弾圧や,国の原子力政策などの社会構造的力関係の問題があるが,精神的・社会的問題もまた軽視してはならないとおもわれる。
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(2019年6月2日補筆)
最近,ある有名な(おそらく良心的な)学者が「憲法は権力者をしばるものであって,国民は憲法を守らなくてよい,というと,みなさんポカンとされます」と得意げに発言している。
しかし,「国民は憲法を守らなくてよい」とは憲法のどこにも書いていない。
憲法第 99 条 【憲法尊重擁護義務】。これを「公務員だけの義務」と誤解する人が多い。それなら民間の企業や団体は,憲法上の多様な人権を無視して事業をしてもよいのだろうか? 
たとえば,民間企業である東京電力は,原発事故によって,国民の,平和のうちに生存する権利(前文)や,基本的人権(11条),個人の尊重,幸福追求権(13条),生存権(25条),教育を受ける権利(26条)を侵害してもよい,というのか?
関西の講演会で,ある法律専門家は地元の大企業を例示して「民間企業であるパナソニックに憲法を守れと要求するのはまちがいです」と解説している。パナソニックは権力者ではないからというのである。パナソニックが憲法を守らないかどうかは知らないが,それならば,民間企業は,勤労の権利及び義務,勤労条件の基準,児童労働の禁止(27条)や,勤労者の団結権(28条)を守らなくてもよい,というのか?
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憲法第99条【憲法尊重擁護の義務】
天皇又は摂政,及び国務大臣,国会議員,裁判官その他の公務員は,この憲法を尊重し,擁護する義務を負ふ。
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毎日新聞 特集ワイド (2019年3月29日)
福島原発事故の「自主」避難者ら「アベコベの世界」に憤り 避難の権利、確立を
https://mainichi.jp/articles/20190329/dde/012/040/011000c
現代ビジネス (2018年3月11日)
福島原発事故「消えた避難者3万人」はどこへ行ってしまったのか
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/54774
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(編集者コメント)
本文 5 段,写真 3 点,全体として被害者の立場に配慮した公正な記事という印象を受ける。
ただし記事中で「自主避難者は現在,統計上避難者に含まれない」としているがこれは誤りである。自主避難者も統計上含まれており,避難先自治体の危機管理窓口で総務省の書式で登録することはできる。避難者であるかないかの認識は避難者自身に決定権がある。行政が一方的に避難者登録を抹消することは国連の指導原則違反となるおそれがある。

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共同通信 (2019年3月4日)
原発自主避難への住宅提供1県に 家賃補助は終了、困窮進む恐れ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190304-00000090-kyodonews-soci
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(編集者コメント)
原発事故の被害者と支援者がどのような運動をしようとも自由であり,それは尊い努力というべきでしょう。
ただし,状況判断にミスがあった場合,最後に苦しむことになるのは被害者である,ということをこの論考では問題にします。状況判断を他人に依存せず,ひとりひとりが自立した知性によって真実をみつけるために,どうすればよいのでしょう?


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(参考記事)
ひだんれん
福島原発事故被害者団体連絡会
原発避難者の住宅と人権保障を求める共同行動 緊急集会「原発避難者をひとりも路頭に迷わせない」報告
http://hidanren.blogspot.com/2018/12/blog-post_4.html#!/2018/12/blog-post_4.html
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