「今日からできる!暮らしの感染対策バイブル」
監修 堀 成美
主婦の友社
令和2年10月31日 第一刷
ISBN978-4-07-445601-7
定価1400円+税
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(あとがきより)
感染症は私たちの生活や社会にいつも大きな影響を及ぼします。感染症対策という仕事をしていると,「細菌やウイルスよりも人間や社会の方が怖いなあ」と思うことがよくあります。今回,多くの人がこの未知の感染症にストレスを感じました。テレビから恐怖をあおるようなニュースが連日流れているので,不安を強めたり,怖いなあ,と思うのは自然なことです。実際に感染しなくても,怖くて眠れなくなったり,人と会うのもいやになったり,その結果,家族や友人との関係が微妙にギクシャクしてしまうこともありました。感染した人を責めたり,対策をとらない人に怒りを感じることも。これでは社会は弱くなるばかりです。
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(感想)監修者があとがきに書かれているとおりであるが,怖いニュースはテレビだけではなく,インターネットに無数に流れているし,ニュース源のわからないものも多数ある。怖いのはそれだけではなく,政府や自治体が個人の行動へのしばりを強調する反面,公権力として予算をともなう合理的な対策を十分にせず,正面から向き合おうとしないことである。これでは感染が広がれば広がるほど個人の責任にされそうだ。まさに恐怖の発生源が人間と社会にあるということである。
この本の前半は(わかりきったようなことが書かれていて)退屈であるが,後半は実際にありそうな疑問を整理して答えられているので,読んでみると心を落ち着かせることができた。ただ,オリンピック・パラリンピックについては感染対策次第で可能,という指摘にとどまり,巨額の費用を感染対策にふりむけるべきであるとの主張は見られない。