20191211 UPLAN
国連『国内避難に関する指導原則』外務省(仮訳)公表についての記者会見 1:22:49
https://www.youtube.com/watch?v=GHH91NZzzes&fbclid=IwAR3YxYqmQZ-7N-bBpprIWixxsuJEKq4cS1zVX-I3CHeGPxFwdQbuXgV-C5A
主催: 国際環境 NGO グリーンピース・ジャパン

【記者会見における質疑応答】
編注:
質疑応答部分のみの音声を書き起こしたものです。
発言者2名の了解は得ています。
無断転載や流用はご遠慮ください。
音声の聞き取り困難な部分があります。
内容は要約であり,修正する可能性があります。
発言者は,鈴木: 鈴木かずえ(国際環境 NGO グリーンピース・ジャパン),森松: 森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream )

21:16 (再生経過時間)
Q: 今回ポルトガルの勧告は,福島第一原発事故のすべての被災者に「国内避難に関する指導原則」を適用すること,とのことだったとおもいますが,日本の回答は「フォローします」ということだったのでしょうか? 
A: (鈴木) 「フォローアップに同意する」ということです。
 
Q: そうすると今回の和訳だけでそれを満たしたと(外務省は)お考えなのか,それともこれは第一歩で,今回せっかく税金を使って和訳をしたのに全然広報してないんですね。わたしもプレスリリースしてくださいといったのにしてもらえませんでした。広報するつもりがあるのかどうか,適用というのは外務省はどこまで,なにをすることをフォローアップと考えているのかについて,なんらかの回答を得ていたら教えていただけないでしょうか?
A: (鈴木) 外務省に聞いたときには「尊重するということです」ということはおっしゃっていました。
 
Q: これ以上なにかするのか,それとも和訳してこれでおわりなのか?
A: (森松) 政府が発表したのだから,本来ならばわたしたちが記者会見を開かなくても,災害も起きているわけですから,より周知すればよいのではないかとおもいます。きょうはたまたま緊急人道支援課の方々は来られないそうですけれども,和訳に対する疑問も出たし「今後これを生かすための勉強会も開きたいので今後ともよろしくおねがいします」というメッセージを送りましたら「こちらこそよろしくおねがいします」というで,やりとりはあるので,今後シンポジウムなどをやるときに積極的に入っていただけたらとおもっています。「パンフレットをつくれないのか」ということも持ちかけていきたい。
 
Q: 避難当事者として「指導原則を適用すること」という勧告にかんがみて,今回の和訳にくわえて,どういうことが政府に必要である,かれらは(国連に)中間報告をしなけりゃいけないんですよね。せめてこれぐらいやらないとフォローアップにならないんじゃないですか,ということについて教えていただけますか? 
25:27
A: (森松) 市民がたとえばシンポジウムや学習会をするのであれば積極的に入ってもらいたい。経緯もふくめて市民にわかりやすく説明してほしい,予算をとって周知する動きも市民とともにやってほしい。
 
Q: 森松さん,現状を見て,政府は指導原則を適用しているとおもいますか? 
A: (森松) 現状ではしているとはおもえない。
 
Q: 大原則のところで「保護する」ということばがありますが,現実に避難者は住宅提供を打ち切られている。日本政府がこの指導原則を適用していないであろう,と思うところを大原則をふくめていくつかあげていただけないか?
A: (森松) 指導原則の範囲とか目的で「国内避難民の具体的なニーズに対処するものである」とあるが,国内避難民だという認識があまりないんじゃないか。自主避難とか避難区域を解除してしまったら,それとは関係なしに,客観的な汚染の状況や被ばく防護の観点から,自主避難者も国内避難民という認識が政府の人にもないんじゃないか。避難者の人数をかぞえない,内情を把握していない,被ばくに脆弱なこどもや女性や避難をつづけたい人のニーズや具体的な声はひろわれていない,和訳をしただけでは保護したことにはならない。

 
Q: 原則 3 の「国内当局は,その管轄内において,国内避難民に保護及び人道的援助を提供する一義的な義務及び責任を有する。」とあります。これについて日本政府は果たしているとお思いですか?
A: (森松) つぎに避難指示を解除される人たちも,自分たちが国内避難民の状況にあるという周知や認識がない。国家にも,避難者を受け入れた側の自治体にも保護義務がある,ということを被災者自身も気づいていない,保護義務は果たされていない。住宅提供は国家,避難元自治体,避難先自治体の全レベルに保護義務がある。
 
Q: 指導原則の適用にむけて積極的に動いてほしいという思いはありますか?
A: (森松) あります。立法化だけでなく,地域防災計画に入れることもできるので,市民,被災者もこの原則をしっかり学ぶことが必要。メディア,政府の方も協力してほしい。
 
Q: 国際的な観点において避難者の方々がもっと声をあげていいんだよ,ということをこの指導原則はいってるように見えるんですけれども。
A: (森松) まさにそうだと思います。ポルトガルがこの指導原則を持ち出して勧告をしてくれたことに意義がある。周知されていないことが人権侵害にあたる。ポルトガル,メキシコ,ドイツ,オーストリアの4つの国が勧告を出し,そのなかにこの指導原則が明確に持ち出して国際社会に知れ渡るように見せてくれたということに大きな意義がある。被災者被害者も声をあげるべき。原発被災者・避難者だけでなく,台風や河川の氾濫で住宅を失っている人もこの原則を適用されるので声をあげてほしい。
 
34:14
Q: この指導原則が一部分でも適用されていると思う部分,あるいは思わない部分をご自分の生活に即してご説明いただけますか?
A: (森松) 区域内や区域外はそのときどきの政治的判断であって,災害における国内避難は客観的状況といえる。線引きとは関係なく,汚染の状況や客観的な事実にもとづいて居所を移動せざるを得なくなった人というのは,すべて国内避難民にあたるんだというこの認識がすべての人に周知されていないということ自体が人権後進国であることを露呈している。
区域外避難だから子どもがいじめられるとか,避難してきたことを被災者自身がうしろめたく思ってしまう,そういう状況自体を是正しなければいけない。是正されていないということが周知がたりないということであり,国連加盟国としては他国から指摘されてもしかたない。
自分の生活に即していうなら,避難していること自体が人権にもとづいた自分の権利を守るための行動だということが理解されていないということは肌で感じている。
住宅提供,雇用,避難をしたい人への制度,施策が実施されていない,ということも副次的にこの原則にもとづいた施策が実施されていないということ。
「強制避難を解除されたから大丈夫」ではなく,そういうところにまどわされるのではなく,客観的な災害時における汚染の状況,被害の状況から,だれでも避難民になりうるということを広く市民社会が理解しなければいけないとおもっています。
この原則は立法化してほしいというのが一番の願いですが,立法化だけでなく,地域の防災のなかにも十分取り込める。被災者だけでなく,市民,支援の側の人たちもこれを理解する必要がある。こういう原則があることがあまりにも知らなさすぎる。

 
38:06
Q: 立法化はハードルが高いかもしれないが,立法化以前にいますぐでも取り入れられるようにおもわれる。既存のスキームのなかでもこの指導原則は十分生かせますよね?
国際社会のなかで日本がいかに立ち遅れているかを示す大変重要な文書だとおもうんですけれども?
A: (森松) そのとおりだとおもいます。周知されていないことが露呈されるほど,つまりいじめ問題や,住宅打ち切り問題や,そのつどこの指導原則をだれも理解していないのか,ということを世界に発信してしまうことになる。指導原則を生かすことに市民として力をつくしたい。メディアのみなさんもぜひご尽力をおねがいしたい。

  
Q: これをとりいれている国,他の国はどういう対策をしているか,そういう比較はできるものか。また,国なり,地方自治体の条例とか,避難者・住民の法的地位があいまい,いまの災害救助法では抜けているようなところ,最低限反映させるべき原則だというようなところを国,地方自治体,議員に対して提案していく具体的なプロセスを考えていることがあれば?
A: (鈴木) 墓田先生のチームの民間訳に書かれている「序言」というのがあり,「アフリカにおいては,指導原則は拘束力のある地域的な文書のなかに組み込まれています。その結果,国内の法令や政策のなかで指導原則に言及した国の数は着実に増え続けています。」と書かれています。それから「現時点で指導原則は 40 を超える言語に翻訳されています。」というのもあります。くわしくは外務省の緊急人道支援課に聞いてください。多分,日本では国内避難民が 20 年見えていなかったんじゃないか。でもやっと見えてきたということで和訳したとおもう。
国連の国内避難民の 3 年間のキャンペーンは来年で終わってしまうので,ぜひこのことを周知していきたいなとおもいます。こども被災者支援法と親和性が高いという印象がある。
子ども被災者支援法もまた法律として大手をふってもらいたい。
 
Q: 子ども被災者支援法をつくったときはこの指導原則は意識されていたのか?
A: (森松)  子ども被災者支援法は原発事故に関する法律。当時の議員さんたちにこの指導原則が意識されていたかどうかは把握していないが,指導原則は原発事故だけの問題ではないが,子ども被災者支援法があるならそこにも生かされるべき。災害救助法も,子ども被災者支援法もふくめて既存の災害法制のなかにこの指導原則をとりいれていく,やりかたはいろいろあるかも知れない。さきほど東京にきたついでに国会議員で国連勧告に関心のある方に接触している。外務省によれば 40 をこえる言語に訳されているそうなので,それぞれ国内立法化しているところはどうなのか,国会議員の調査権をつかって調べてほしいし,外務省にも協力してほしい。
国会に災害特別委員会があるらしいので,そういうところで,もちろん子ども被災者支援法をつくってくださった先生方はもちろんさらに理解が高いわけですから,一緒になって,災害法制のなかに入れていくべきと考えています。いま関西の方では勉強会が立ち上がっていますし,市民も学習して,議員の先生に聞くなり,政府に聞くなり,外務省に聞くなりやっていけたらと思っています。
 
46:45
Q: 全国各地の避難者の裁判で京都や,***米沢の裁判で住宅の問題とこの指導原則を出しているとおもうが,それぞれの裁判ですこしずつ使いはじめているということと,国会議員さんをまわってみて「国会でこういう議論をしていきたい」というような反応,レスポンスはあったか?
47:38
A: (森松) 原発に特化する問題ではない。裁判のことをおっしゃいましたが,国とか東京電力の加害責任とは別に,すべての人にかかわる原則としてある。加害責任とは別に国家の保護義務としてこの指導原則がある。裁判とは別に,国会議員には知っておいてほしい。国だけでなく,すべての自治体で防災にかかわる人も,災害があれば避難者が出る,あるいは避難者を受け入れるという形でももちろん知っておいていただかなければいけない原則だとおもう。


Q: 具体的な災害の課題をかかえている自治体もある。そういうところにもこの指導原則を生かしてほしいという働きかけるのですね? 抽象的にこの原則をいうよりも,それぞれ関係あるところに具体的に働きかけるという行動もしていきたいということですね?
A: (森松) もちろんそのとおりです。原発事故の避難者は原発事故によって国内避難民になっているわけですから。

 
50:05
Q: 具体的に国や各地方自治体に対してこの指導原則にそった対応を求めていくというアクションはするか?
A: (鈴木) すでにやっている。裁判もそうですし,住宅提供の継続だったり,そのものですよね。被災者のみなさんがこの指導原則を読んで,自分がこの権利を持っているんだということを思っていただくことがすごく大事。放射線の高いところに住まない権利,ちがうところに住む権利はすでにあるので,すでにやっていることが指導原則に沿っていることでもある。

 
Q: ひきつづきこの指導原則を実行するように,国や地方自治体にも働きかけるということか?
A: (森松) そうです。たとえば,指導原則15に,国内避難民は以下の権利を有する。とあり,(a) 国内の別の場所で安全を求める権利,(b, c 略) (d) 自らの生命,安全,自由若しくは健康が危険にさらされる可能性のある場所への強制的な帰還又は再定住から保護される権利があるというところも,被ばくに脆弱な子どもをもつ世帯ともたない世帯では考えかたや行動のとりかたがちがうが,政府がこの保護義務についてちゃんとやってほしい。いまのところ,なにもしていない。強制避難区域とそうでないところをわけたり,差別や分断をあおってみたり,とか,真逆の動きになっているところは是正していただいて,具体的にこの原則を生かしながらわたしたちも声をあげていきたいとおもいますので,周知と具体的に生かせるような社会になってほしいとおもいます。

 
Q: 最近の水害で被害があったがそこに住まざるを得ない,再建ができない方にとっても光があたるものだと考えられるでしょうか?
A: (森松) そのとおり。たとえばがけくずれがしそうだとか,安全でないなら保護を求めるとか別の住宅を確保してくださいと,いろんな場面で適用できる。防災先進国といっていてこの基準をまったく知らされないのであれば国際社会から取り残され,また指摘されることになろうかとおもいます。ぜひ報道の方々もこの指導原則の周知にむけて努力をおねがいしたい。
 
55
Q: この指導原則を周知させるために,他の被災者のグループと一緒になにかやるような具体的目標というかイメージ,計画していることがあれば?
A: (森松) 原発事故を契機に被災者と支援者もつながっている。ひろく自然災害もふくめて一緒にやっていきたいがそのためには周知が必要。いま,国連「国内避難に関する指導原則」を学び生かす会(準備会)が立ち上がっている。いろんな人が入っている。国会議員や外務省の方々とも,シンポジウムや院内勉強会の形にするのか,相談していきたい。国際人権法,国際人道法に精通している方や,子どもの権利条約など,さまざまなとりくみをしている人とつながっていけるとおもう。

 
Q: 国連「国内避難に関する指導原則」を学び生かす会(準備会)の活動について説明してほしい。
A: (森松) フェイスブックで関西を中心に立ち上げている。現在 34 人,避難者,支援者,専門家(国際法の研究者,環境活動家,弁護士など)が参加している。災害法で活躍されている兵庫の津久井進弁護士も参加。津久井弁護士は非常にわかりやすい超訳も作成されている。

 
Q: 海外からも参加しているようだが?
A: (森松) 海外在住日本人も複数参加している。これは大事なこと。

 
Q: 学び生かす会は広めていく拠点と理解してよいか?
A: (森松) そうなってほしい。政府訳の公表からすぐに立ち上がって,ひろい立場の方が参加している。

 
Q: 関西中心ということだが,阪神淡路大震災の災害復興住宅の関係者も入っているか?
A: (森松) 入っている。それにかかわっている弁護士,支援者も入っている。住まいが生活の拠点。幅広くつながっていきたい。

 
Q: 学び生かす会が立ち上がったのは 11 月下旬か?
A: (森松) 11 月 24 日,そういう市民グループもあるということは取り上げてほしい。

 
Q: いま「準備会」になっているがこれはいつ取れるのか
A: (森松) 帰って相談したい。

 
Q: 記者会見もするか?
A: (森松) もちろんそうですね。回数をかさねた方が周知していただけるのか,勉強会の形がよいのか,取材してもらえるのか考えたい。

 
Q: 入りたいという人があったらグループで審査があって入れるのか?
A: (森松) 参加申請をすると簡単な質問がある。この問題が大事だと思っている人は受けいれていきたい。

 
Q: シンポジウム開催はこのグループでやっていきたいということか?
A: (森松) 他の団体との共催の可能性もあるが,今後どんな形になるかはわからない。

1:08
司会者 発言者からつけたすことは?

(鈴木) 国連で国内避難民の人権のキャンペーン期間が 2018 年から 3 年間となっている。詳細はあとでお知らせしたい。

 
Q: 日本政府の中間報告の期限は?
A: (鈴木)(つぎの UPR は) 3 年後と聞いている。NGO はどんなかかわりができるかと聞いているが,本当は勧告されたらすぐに実態調査をして対策をとるものとおもわれるが,報告期限の直前ぐらいに動くということらしい。
 
1:11
Q: 外務省に対して実態調査をしろという問いかけはあるのか?
A: (鈴木) 当事者の話を聞いてくださいねと(外務省に)申しあげたが,そもそも UPR に当事者という枠組みはない。NGO という枠組みで当事者がヒヤリングに参加されたらよい。なかなか当事者が話をあげにくい状況になっている。できるだけ橋渡しをしたい。

 
Q: 当事者性をもっと前面に出して政府が報告書を書くようにできないか。障害者権利条約が最たるもの。この指導原則にも当事者性が入っている。政府の報告書にも当事者の実態調査をするようにという働きかけはした方がよいのではないか。

A: (森松) 国連に行く前と後も,国際環境 NGO のグリーンピース・ジャパンさんと,国際人権 NGO のヒューマンライツ・ナウの方々が協力してくださって周知や当事者を前面に出してくださるような活動をしてくださった。それがきっかけでグリーンピースさんとは一緒に外務省に行って,報告書にどんなことを書くんですか,とか会話しながら当事者の事情を伝えることもできているので,それはひきつづきおねがいをしたい。
当事者も市民と協力しながらグループを立ち上げて発信をつづけたい。

 
1:13:50
Q: この(指導原則の)文面に対するフォローアップといっても具体的な姿が見えてこない。具体的な行為を反映させるような,こういう中間報告をつくってほしい,というような双方の関係をつくっていくことが大事。平行線ではなく,かみあうような中間報告を書かせるような取り組みが必要ではないか?
A: (鈴木) そのためにも国内避難民の特別報告者の日本訪問要請を受けいれてほしいとおもいます。

 
Q: 自然災害の場合は自助努力が原則といわれてきた。指導原則は日本における災害の考え方に反省というか見直しをせまるものになっている。状況は大きく変わってきている。政府の答弁も変わってくるのではないか。
A: (森松) 国家ってなんのためにあるのか,ということになる。総理大臣,各国会議員がこの指導原則をどのように理解されているのか,聞いてみたい。自己責任などということばがあれば非常に問題。

 
Q: 災害救助法や被災者生活再建支援法が適用されない災害がいっぱいある,ということはこの原則からすると外れている。
A: (森松) そのとおり。原発事故の線引きと似ている。法律で決めようが決められまいが,災害によって避難を余儀なくされた人のための人権法制ですから,そこが抜け落ちている。ガイドライン的にも頭にはいっていないというのがいまのこの国の状況だとおもいます。この状況をよくする取り組みが必要だとおもいます。
たくさんの質問をいただき,ありがとうございました。いろいろ取り組まなければいけない課題も見えてきました。今後ともみなさんよろしくおねがいします。
1:18:55 終了
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