幻冬舎新書 513
https://www.gentosha.co.jp/book/b11951.html
ISBN978-4-344-98514-8
2018 年 9 月 30 日 第一刷発行
哲学対話をテーマにしているが,いわゆる哲学用語は出てこない。非常に読みやすく,わかりやすく,納得できる本であると感じる。あえていえば,いまの日本人に必要な本ではないだろうか? たしかに「もっともっとまずいことが起きている」のだから。
著者は,知識としての哲学ではなく,体験としての哲学を提示する。2012 年夏,ハワイで「子どものための哲学」(Philosophy for Children,略称 P4C)の授業を実践している高校と小学校の授業を見学したことがきっかけだという。著者は「考えるということがどういうことか,人に問い,語り,人の話を聞くということがどういうことが,私自身はじめて分かった気がした」という。さらに,「考えるということを起点として社会の中にあるいろんな問題が見えてきたのだ。しかもそれは社会の限られたところにある特別な問題ではない,そこらじゅうにあって,しばしば気づかないぐらい私たちの内奥に食いこんでいるだ。それは「考えるって楽しいね!」とか,哲学は好きな人だけやっていればいいのだという,呑気な話ではない。もっともっとまずいことが起きている。」と注意をうながす。
そして,問う・考える・語る・聞くという哲学のプロセスを自分自身でも,また他人との関係でも実践できることで,あたらしい展望をひらく可能性をしめす。第 4 章ではその具体的な実践手法を提案している。
(引用)「考えることは大事」といわれるが「考える方法」はだれも教えてくれない。ひとり頭の中だけでモヤモヤしていてもダメ。人と自由に問い,語り合うことで考えは広く深くなる。その積み重ねが,息苦しい世間の常識,思い込みや不安・恐怖から,あなたを解放する――対話と通して哲学的思考を体験する試みとして,いま注目の「哲学対話」。その実践から分かった,難しい知識の羅列ではない,考えることそのものとしての哲学とは? 生きているかぎり,いつでも誰にでも必要な,まったく新しい哲学の誕生。(引用ここまで)
そういえば,たしかに生活のあらゆる場面に,質問ができず,対話ができず,あたらしい考えを展開できない,閉塞状況がある。家庭も,学校も,社会も,市民運動も例外ではない。熱意あふれるリーダーの提案に仲間から質問が出ただけでうろたえ,質問には答えずに,意図を疑って聞き出そうとする,などという場面は,まさに閉塞現象といえる。まずは問うこと,問いに答えようとすること,そこから「考えること」が始まる。
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目次
はじめに
第 1 章 哲学対話の哲学
1. 哲学対話とはどのようなものか?
2. 哲学対話のルール
第 2 章 哲学の存在意義
1. 哲学対話の効用
2. 自由のための哲学
3. 責任のための哲学
4. 自分のための哲学
第 3 章 問う・考える・語る・聞く
1. 問うことと考えること
2. 考えることと語ること
3. 語ることと聞くこと
第 4 章 哲学対話の実践
1. 用途と参加者
2. 場の作り方
3. 対話の進め方
おわりに
あとがき
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記事のアドレス http://starsdialog.blog.jp/archives/80728007.html
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