神戸新聞 NEXT (2019年1月17日)
自然災害の公的支援ガイド 弁護士ら発案「被災者ノート」活用進む
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201901/sp/0011985493.shtml
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記事のアドレス http://starsdialog.blog.jp/archives/78804538.html
(研究のための保存)
 自然災害に遭った人たちに向け、日弁連が作った「被災者生活再建ノート」が被災地で活用されている。さまざまな支援制度を丁寧に解説する内容で、悩みや専門家の対応などを自ら記していくと、的確な対応につながる。法律、福祉、行政など分野を超えた「カルテ」の役割も果たす。

 日弁連災害復興支援委員長を務める津久井進弁護士(49)=兵庫県弁護士会=はノートを発案した一人。きっかけは阪神・淡路大震災の経験だった。

 神戸市育ちの津久井弁護士は阪神・淡路の発生当時、司法修習で関東にいた。居てもたってもいられず、神戸に戻りボランティアをしたのが、災害支援の始まり。遺族らの損害賠償訴訟や震災に絡む詐欺事件を担当し、今も借り上げ復興住宅の退去問題や原発避難者の裁判などに関わる。

 被災地で相談を重ね、見えてきたのは、公的支援の網からこぼれ落ち、元の生活を取り戻せない人たちが多いことだ。支援のメニューは増えたが、被災した人たちには知られず、利用されていない。そもそも専門家の相談は「医師が問診票も見ずに聴診器を当てるのと同じ。まずは正確な情報と自己診断」と気付いた。

 東日本大震災の被災地で活動する弁護士らと約8カ月かけ、昨年2月にノートを完成。人、住まい、仕事の被害状況や悩み事を書くと、どんな支援制度が受けられるか確認できる。

 住宅再建や各種融資、災害弔慰金など支援制度を網羅的に解説。預貯金を残しつつ、住宅・車・教育ローンの免除・減額を受けられる制度など、生活再建に効果的な制度も取り上げた。

 津久井弁護士が求めたのは「被災者が伝えきれなかった声が聞こえるように。心の葛藤が見えるように」。長い復興の道のりで個別の悩みを漏れなく映し出すことが大事という。相談内容を残し、弁護士、福祉職員と、担当者の分野が異なってもスムーズに引き継げるようにした。

 津久井弁護士は「災害が起きるたび、同じような問題で悩んでいる人たちがいる。そんなことが繰り返さないよう、法に関わる者として使命感がある」と話す。日弁連のホームページから無料で印刷して使える。日弁連TEL03・3580・9841(小林伸哉)