「放射能汚染防止法」はなぜ必要か? ミニ学習会(高槻)
http://starsdialog.blog.jp/archives/73253118.html

よくある質問:放射能汚染防止法学習会
http://starsdialog.blog.jp/archives/74508017.html

弁護士山本行雄 情報提供 札幌弁護士会所属
http://blog.goo.ne.jp/zzyukio8989/e/afb3dcd05583cbcc58a94e2ec6dd4393

以下は,2017年11月7日に開催した「放射能汚染防止法」はなぜ必要か? ミニ学習会(高槻)における質疑応答のまとめである。
原文中の図形はそのまま再現できないので,著者がテキストデータで簡略化されたものを当ブログ編集者が受け取り,整形して掲載した。(ブラウザによっては体裁が再現されない可能性がある。)
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<2017.11.27 上田三起様提供質問事項>  2018.1 山本行雄

Q1、「放射能汚染防止法」の法整備を考える上で、泊原発が正常に稼働している場合でも,原発周辺で生じている健康被害が(あればと仮定して)きっかけとなったことはあるか。
A ある。
「健康被害があれば」というより、健康被害を「ないことにして」運転していること 
(泊原発に限らないが)、泊原発のある泊村のがん発生率が高いこと、量規制なき廃棄、排水が現に行われてきたこと、健康被害の疫学的調査、海洋被害の調査がないこと、などなど
 

Q2、「放射能汚染防止法」の法整備が実現した場合、原発の再稼動は可能になるのか。現実問題として,この法整備で罰則規定や総量規制をかけて,原発は稼働できるのか。
A 法律上再稼動「できない」ことにはならないが、運転停止リスク、役職員の刑事罰、公害対策費用、などを考えると、事実上再稼動は困難になると思う。
以下のよう状況変化により、原発産業の状況は一変する。原発産業は「公害規制からフリー」というパラダイスの時代は終わる。「再稼動しても割に合わない」事業にならざるを得ない。
※ 原発の「平常」運転時の排気・排水は、現在の「薄めれば無制限」の罰則なき濃度規制から、罰則付の量規制が行われる。トリチウムなどの濃度違反、排出量違反も刑事罰の対象になる。事故型汚染に公害犯罪処罰法を適用すれば、福島事故の場合、不起訴処分はあり得ない。
再稼動に間接的に影響することも多くなる。六ヶ所の再処理施設のズサン管理で、規制委員会が、安全審査を中断するような事態になっているが、捜査は入っていない。公害規制法を整備すれば、このような場合捜査が入るのが普通になる。
数値は示せないが、公害対策費も膨大になる。
別紙「放射能汚染防止法制定運動 よくある質問(全般)」も参照のこと。

 
Q3 地方自治体での条例制定(横出し条例、上乗せ条例)を「ステップ1」、その後地方から波が起きて、中央で超党派議員連盟などが結成され、ダイオキシン特措法のような単独立法形式を例えば議員立法により制定する流れを「ステップ2」として.最終的に「原発再稼動」に歯止めを掛けることが可能であるなら、最初からそのビジョンを明確にしてほしいが、これについてはどう考えておられるか。
A 少し長くなりますが、以下の通り。
① 放射能汚染防止法制定運動と再稼動阻止の関係は、「放射能汚染防止法制定運動  よくある質問(全般)」の次の図と関連解説を参照。

   A                B
原発稼働 → <脱原発・再稼動なし> → 原発停止
 核廃棄物              核廃棄物
 汚染ゴミ              汚染ゴミ
 溶融燃料             溶融燃料
 廃炉ゴミ              廃炉ゴミ

  (汚染取り締まり)        (汚染取り締まり)
 (被害者救済)          (被害者救済)

 ←― AB を通じて放射能汚染防止法が必要 ―→


放射能汚染防止法制定運動は、再稼動を阻止して終わる運動ではありません。両者は併走した運動によって相乗効果をもたらす関係になる。(②参照)。
あえて「最終目標」という言い方をすると、時々の政治や経済に左右されない恒久的な総合的放射能汚染防止法を制定すること。
② 当面の目標として、再稼動阻止に的を絞った放射能汚染防止法制定運動のビジョンは描ける。
 ア 直面する再稼動問題に絡めた運動としては、県道知事に対する、汚染被害に関する質問の運動。
国は、法整備を国民に約束したのに未整備のまま再稼動に同意することは許されない等。
 イ 県道議会に法整備の意見書を採択させる運動 
これをテコに知事に対して、議会の意思を尊重し、再稼動の同意不同意の前に、国に法整備を要求することが先であるなどの運動の積み重ね。
 ウ 国会で超党派議員連盟の結成
超党派で法制度の抜本的見直しを議決している。法整備前に再稼動をするのは,環境基本法の趣旨に反する、内閣も法整備に取り組むべきである。
再稼動は中止し、法整備に取り組むべきである。などの運動。
 (北海道では、ほぼ以上を意識した運動が行われている。)

③ 「横出し条例」は、自治体が独自に放射性物質を公害規制の対象にする条例である。
汚染廃棄物の中間貯蔵施設や焼却処分施設のある自治体に期待したいが、残念ながら率先して取り組む自治体(住民の大きな力の背景が不可欠であるが)は、今のところ見出せない。ただし、制定動機は異なるが東洋町条例の例
 上乗せ条例は、上乗せの前提となる法律の基準が未整備なので現状では制定できない。
  そこで、考えられる取組みついて場合分けし、地域の実情に応じて取り組みを工夫。
 ア 事故由来廃棄物の取組み

 <管理施設>
    自治体独自の監視・検査を条例で定める。
    独自の横出し条例=管理施設の排気・排出(水)基準を定める。

 <焼却>
   焼却予定段階の自治体=焼却禁止条例、焼却しない政策決定、焼却禁止決議
    焼却が始まった自治体=横出し条例としての大気汚染規制、水質汚濁規制。
             焼却中止政策への転換、焼却禁止条例
    注:おかれた状況に応じて、焼却禁止(反対)と、焼却施設の排出規制要求のように要求の力点が異なるのは何ら矛盾ではない。公害問題では通例みられるもの。
条例制定直接請求を行う場合には、住民にとって切実な問題だけを取り上げることも考えられる。
例 焼却処分施設の立地規制(住宅地、学校、保育所などからの立地規制。)

  <指定廃棄物最終処分場>
    拒否条例。
*栃木県塩谷町では、尚仁沢湧水の保全条例制定の陳情が採択されている。
*高レベル(核のゴミ)処分場を巡ってであるが、高知県東洋町の放射性廃棄物「持込拒否条例」では、「町地域内においていかなる場合も放射性物質の持込を禁じ、またそれを使用したり、処分したりする施設の建設及びそのための調査を拒否する」「東洋町は、この条例に違反した原子力関連施設の責任者に対し、調査及び施設の供用及び操業の即時停止を求めることが出来る。」などの定めをしている。
*自治体独自の監視・検査を条例で定める。
   *独自の横出し条例=管理施設の排気・排出(水)基準を定める。
   *立地規制条例 住宅、学校、保育所など
 イ 原発、再処理施設、ウラン濃縮工場等
    横出し条例で、規制基準、環境基準を制定できることが大気汚染防止法、水質汚濁防止法で認められているところ。具体的内容は「制定しよう放射能汚染防止法」参照。

 ウ 条例制定権と国の態度
  公害規制の条例制定には「国が妨害する」が、歴史的定番。住民、自治体が動き世論が支持し、政治に影響を与えるという基盤はあると思う。公害規制の歴史を振り返ると、子を持つお母さん達に支持されるような運動が大きな成果を挙げている。
 
Q4 「罰則規定」の具体的な内容(例えば罰金額など)を教えて欲しい。
A 以下の通り。
(1)罰則規定
 規制基準違反   6月以下の懲役又は50万円以下の罰金 
 排出基準不適合変更命令違反 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
(以上大気汚染防止法,水質汚濁防止法)
 現在の公害法令をそのまま適用した場合。放射性物質につき別段の定めをするか否かは別。
  
公害犯罪処罰法違反 (人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律))
   故意犯 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
    死傷 7年以下の懲役又は500万円以下の罰金
   過失犯 2年以下の懲役又は禁錮若しくは200万円以下の罰金
    死傷 5年以下の懲役又は禁錮若しくは300万円以下の罰金 
  適用除外規定はないので、現行でも適用があるが、最高裁が「事故型」を適用外にして「骨抜き」になっているので、福島事故と同様の事故に適用出来るよう改正運動中。刑罰も最高刑無期懲役を要求している。

放射線発散処罰法(核テロ防止法)
  すべて故意犯 2年以下の懲役
       死傷 最高刑無期懲役


Q5 「放射能汚染防止法」で、放射能汚染に対する罰則規定を設けるということだが、実際に事故が起きた時、避難者はどうすればいいのか。この法整備で言及しているか。
A 以下の通り
(1)「制定しよう放射能汚染防止法」第6章の被害者の救済制度が整備されれば、権利としての住宅保障や、1ミリシーベルト基準の避難の権利や、賠償請求、医療保障などの保障が受けられることになる。制度が整備されれば、当然の保障になるので基本的には申請手続き程度で行われる。
 以上のように、現在行われている賠償の範囲が拡張され、現在は存在しない公害救済制度による新たな救済がなされる。
事故を起こした者に対する刑事告発なども当然出来る。公害犯罪処罰法改正も放射能汚染防止法制定運動の一環なので、福島の事故と同様のことが起これば、刑事告訴できる。ただし、法整備がなされれば告訴がなくても捜査機関が動くことになる。
(2)事故後直後の避難など
  事故後の避難の範囲、ヨウ素剤配布など原子力防災についても、放射能汚染防止法と重なり合う部分が多くあるが、これまで言及してこなかった。今後取り上げていきたい。

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 これからもご指摘お待ちしています。我々の考えは不十分なものです。それぞれの経験や生活に即したアイデアを出し合いながら。それぞれのよいところを採り入れて広めていきましょう。
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