みなさま
暑い中を 当日の傍聴 ありがとうございました。

第1回目は 大阪地裁民事部の小さな会議室で開かれました。円卓テーブル形式の裁判は初めての体験で、民事裁判と刑事裁判の違いを実感しました。
担当裁判官は長谷川純子氏,一見、アットホームな雰囲気で始まりました。
これは関電を訴えた民事訴訟なので、原告の事を債権者、被告を債務者と呼びます。

少し長くて恐縮ですが、我慢して読み進んでください。一市民が起こした良識を求める訴えなので、難しいところは全くありません。 
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先ず大まかに、債権者側の主張から。

◎申し立ての趣旨

自衛隊法82条の3 第1項、(第3項も=提出後に追加)による「破壊措置命令」が出ている間は、高浜原発3,4号機を運転してはならない。

1、事案の概要  略

2、北朝鮮のミサイルをめぐる情勢  略

3、日本政府の対応
  2014,11,25の安倍総理の答弁書;「我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっていると認識している」「弾道ミサイル等が我が国に飛来する恐れがあり、・・・人命財産に対する被害を防止する必要がある」とみとめ、自衛隊法に基づき、自衛隊の部隊に対して、我が国に向けて現に飛来する弾道ミサイル等を我が国領域、又は公海の上空に於いて破壊する措置をとるべきことの命令(以下「破壊措置命令」という)を発した。

初めは発射が予想される毎に 同発令をしていたが 2016年8月8日からは常時発令(3か月ごとに更新)となり今日に至っている。(政府は公表していないが、朝日、読売、毎日、産経、東京、日経全紙が常時発令、現在も、と報道。よって(公知)の事実である。)

4、ミサイル迎撃体制の不確実性  略

5、ミサイル攻撃された時の原発重大事故の発生の態様
シナリオ1・・・全電源喪失  もっとも確率が高い。福島第一原発事故がこれに該当
シナリオ2・・・格納容器の破壊。精度7メートルの誤差の実績があると自称している。
シナリオ3・・・原子炉(圧力容器)の直撃

   最近の知見で 中東の実例から高性能爆弾を搭載したミサイルによれば 原子炉本体を破壊することが明らか(藤岡淳著「軍事攻撃されると原発はどうなるか」2ページ~3ページ)

6、想定される債務者の弁解とそれへの批判  略

7、被害の巨大性と債権者が受ける被害
(前略) 原発が爆破された場合の被害は、原水爆の被害よりもはるかに大きい。油田に乏しい資源小国イスラエルは100発以上の核兵器を持つ核大国だが原発を持たない。敵意を持つ国に囲まれているため、原発がミサイル攻撃やテロ攻撃された時「敵国のために用意した核弾頭」となるから。(「なぜイスラエルでは原発の建設に積極的ではないのか」藤岡淳著)

8、避難の可能性
混乱を極め困難

9、保全の必要性(緊急性)
(前略) ミサイル着弾に対する備えとして、原子炉内の核燃料および使用済み核燃料プール内の核燃料を安全な場所に運び出すしかないがこれは短時間でできることではない。しかし、少なくとも現在運転中の原発の運転を停止して核燃料を冷温保管しておけば危機が発生した時に、破滅的事態への進展を食い止める時間稼ぎができる。原子炉容器や使用済み核燃料プールを直撃した場合は、停止させていても、無意味かもしれない。しかし、着弾点が少しでもずれていれば、対策の余地が生じうる。ミサイル着弾を想定した時、ただちにできる対策は 原発の運転停止しかない。

10、結論
(前略) 政府がミサイルへの破壊措置命令を出しているということは、政府が国民の生命、財産が危機に瀕しているという事の公式表明である。ならば地下鉄や新幹線を止める前に原発を止めるべきである。被弾した時の被害の大きさは国が亡びる危険性さえあるのだから、(通称『最悪のシナリオ」2011,3,25近藤俊介)
常識ある人々は誰しも思っている。
「そんなに北朝鮮のミサイルの危険性があるならば、なぜ地下鉄を止める前に原発を止めないのだろう」(東京新聞2017,5,3)
本件はこのような常識に基づくものである

関電側の言い分

◎  関電側の言い分を 私なりにまとめてみました。

● 常時破壊措置命令の発令を政府は公表していない。
● ミサイル攻撃が本土におよんだことはないし、被害も出ていない。
● 武力攻撃事態対処法(武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律の略称)と国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律の略称)に従い、国が対応し、関電はこの枠組みのもとで対応する。「武力攻撃予測事態」に至っても、政府は公示 周知させるがそこにも至っていない。
● ミサイル発射問題については外交努力が継続中だし、原発を攻撃目標にしてはいけないとしたジュネーブ諸条約に日本も北朝鮮も加入していること、イージス艦と PAC-3 を軸とした防衛整備が着実に進められていることなどにより、切迫した危険があると考えられない。武力攻撃事態対処法、武力攻撃下での国民保護法、原子力規制委員会、福井県知事の要請の中で関電は対応する。

武力攻撃事態への対処の枠組み
ア  政府が、武力攻撃事態等に至った事実が記載され、判断したことがその根拠と共に明らかにされる。この基本方針が決められた時、総理大臣は自らを対策本部長とする事態対策本部を設置し、国民保護法に基づく措置をとる。

イ  武力攻撃に伴って 放射性物資が放出される恐れがあるときは国、地方公共団体(福井県)、関電は国民保護法等により必要な措置を講じる。

原発の運転を止めるときには、施設と運転要員の安全確保、関係機関との連絡について、国の一元的な指揮のもとでおこなう

● 原子力委員会の役割
武力攻撃による災害が発し、またはその恐れがある時には、災害の拡大を防止するため、緊急性を認めたら、関電に発電所の使用停止、核燃料物資、または核燃料物資によって汚染された汚染されたものの所在場所の変更、その他 それらのものと原子炉に関わる災害の拡大を防止するための、必要な措置を講ずべきことを命令する(国民保護法106条)

● 福井県
武力攻撃に伴い放射性物質の方さん被害の恐れがある場合で緊急に必要であると認められる場合は国を通じ、あるいは直接関電に運転停止などの要請をする。

● 関電
① 地域を決めて警報が発令されたとき、・・・・運転停止についての措置をとる。地域を決めない場合の警報にも運転停止に向けての措置をする。
② 規制委員会、福井県知事からの要請があれば、停止に向けての措置をする
③ 突発的に武力攻撃が起きた場合は、平時における緊急事態負いうマニュアルに基づき、自らの判断で原子炉の運転を停止する。
現実はこの枠組み以前の状況である。(本土も狙われていないし、話し合いの努力がなされている段階だし、ジュネーブ条約に加入しているし)、ミサイル攻撃の具体的現実的な危険が切迫しているとは言えない。

◎ 高浜原発3,4号機のテロ対策
● 原子炉等規制法等により、①設置基準の条件にテロ対策の基準を決めている。②保安や核燃料物資にたいする所定の防護措置を義務付けている。
● 故意による大型航空機の衝突、その他のテロリズムによる大規模損壊対策
ア 法令が要求していること
① 設置許可基準規則43条で故意による大型航空機による衝突、そのたテロによる原子炉の大規模な損壊が発生した時にも備えて設置されねばならない。
重大事故対処設備には、可搬型と常設型があるが (非常用電源などのこと?)3条5は可搬型を原子炉建屋から離れたところに保管することを求めている。
② 消火活動、炉心の著しい損傷緩和のための対策(?)格納容器の破損の緩和のための対策を求めている。手順書の整備、そのための体制や資器材の整備、(教育訓練含む)を保安規定で定めている
● 保安規定の順守状況や訓練のうち原子力規制委員会が必要と認める物について同委員会の検査を受けることを求めている。
● 高浜3,4号機における対策
不確定性が大きくシナリオを予想するのは困難。可搬型設備による対応をしており、規制委員会の新規制基準の適合性審査にだと生が確認されている

結論
仮にミサイル攻撃があったとしても、当原発に命中する確率はどれくらいか、その結果原告にどんな被害をおよぶすか、具体的でない。現段階は国が作る枠組み以前の段階だ。万一のことがあっても現体制で十分に活用して対応できる。

第1回期日のご報告

~~わたしの記憶と簡単なメモに基づいての記録です。ご了解ください~~

いきなり裁判官は 趣意書の5に書かれている3つのシナリオという核心から 話が始まりました。

どれくらいの範囲にミサイルが落ちれば 電源喪失に至るのか、など この3つのシナリオにのどこに比重を置いているのか、などの質問がありました。それに対して、特別に想定できないが、直撃よりは周辺に落ちる可能性が高いと考えるというやりとりがあり、関電側に対しては、「それぞれのシナリオについて、80キロの原告にどんな被害が及ぶかどうかについてききたい」という質問が出ました。

関電側は「ミサイルによるから、一概に言えない」と答えました。こちら側からは、それにこたえる形で福島原発でその被害は既に自明であること、一番危険なのは北朝鮮に一番近い日本海側で動いているのは高浜であり、あと伊方、川内だと語りました。

弁護団より、関電側は自分の言いたいことを書いているだけで、こちらの主張に対する認否をしていない。したくないというのは許されない。スムーズに審議を進め、正しい結論に行きつくためには必ず認否はしなければならない。疑問の点は『求釈明』してほしい、と強い調子で要求しました。裁判長もそれを支持、出すようにといいました。

あと1点、弁護団より関電側答弁書の『原子力委員会の役割』の中の核燃料物資の所在場所の変更を求められている(上記赤字部分)が、それに対して書いてないが、どう対応するのか、と質問が出されました。(これぞ核心。稼働中の原発を冷温停止させて冷えるのを待って核燃料を取り出し、安全なところに移す。短時間にどうやって実行できるのだろう。)

その2点を含め8月31日までに双方が書面を裁判所に出すことが決められました。

次回は9月11日4時と決まりました。

真情込めて語っているのは、こちら側の弁護士ばかり。関電側は聞かれない限り黙っています。聞かれても最低限のイエス、ノー程度の受け答えです。この代理人は大飯裁判でも高浜仮訴訟でもすでに顔なじみの代理人。元気がよかったのは樋口裁判長忌避!を叫んだ時だけでした。それでも上級審では、勝てるという余裕なのでしょうか。金持ちケンカせずって??私には見飽きた風景でした。

裁判長は女性で一見フレンドリー、でも金沢高裁でお人柄よさそうと思った裁判官にまんまと背負い投げされてからは、もう雰囲気で騙されないぞと思う。科学論争が入る余地がないので、「原発は少しの具体的危険性も排除しなければならない」という原発の鉄則を 関電に問う裁判。一方「常時破壊命令」がもしも解除されて、こどもの避難訓練がなくなるとすれば、それはそれでとても嬉しい。あの無益有害の避難訓練は子ども虐待だから。解除できる状況とは、軍事予算を増やす口実が無くなり、戦争も一歩遠のいた状況の到来を意味する。どちらに転んでも、希望が持てる。どうか、どうか ご注目ください。水戸喜世子
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