原発災害からの避難者,避難の権利について関心のある人にとって,重要な参考書といえる。特に,憲法の視点から考察するときには必携書といえるだろう。その意味では,憲法解説書のような性格ももっている。

「あとがき」によれば,この本は 2007 年 3 月 24 日に神戸で開催された『災害復興ガイド』の出版記念シンポジウムの講演の記録をまとめなおしたものである。
片山氏はまず,ミッション(使命,真の役割)とは 「だれのために,なんの目的で,その仕事や業務があるのか」 という問題である,と提示する。そして,公共事業と議会の事例をあげつつ,当事者が根本的にミッションをまちがえている問題をといかける。
鳥取県西部地震に知事として対処した経験をふまえ,災害復興の真の役割とは 「被災者のために,被害を軽減し,元にもどせるようにすること」 であることを示し,その基本は憲法の実践であることをあきらかにする。
津久井氏は,同じ立場にたちつつ,現在の災害法制の矛盾や弱点を解剖し,あたらしい災害法制と災害行政について,提案されている。あらためて憲法を深く理解する意味でも参考になる本である。
なお,政府がたびたび憲法を軽視するばかりか,憲法違反の法律まで強行するという事態のなかで,国内法の視野だけでは,展望をもつにはまだ十分ではないだろう。
国際人権法の視点から関心をもつ人には,『奪われた居住の権利――阪神淡路大震災と国際人権法』(熊野勝之編著,エピック,1997) も基本文献といえるので,両方を読むことで問題を立体的に理解しやすくなるとおもわれる。 
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(参考記事)
兵庫県震災復興研究センター
出版物案内
災害復興とそのミッション
http://www.shinsaiken.jp/modules/tinyd2/index.php?id=8
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記事のアドレス http://starsdialog.blog.jp/archives/46408203.html