明日に向けて (1169) 新著 『原発からの命の守り方』 を上梓します。ぜひお買い求めを!
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(感想)
この本は原発反対または推進のいずれの立場の人であっても目を通すべき本ではないだろうか? なぜなら,著者も書いているように,日本には現実に多数の原発があり,使用済み核燃料だけでも約 1 万 7000 トンもあるという(p.36)。なんの防護もない冷却プールが大地震などで破損すれば,これまで以上の核被害が起きるおそれがある。それだけではない。世界には老朽化した原発が多数あり,旅行や出張や留学で事故に遭遇する危険性も否定できない。
本書は市民だけでなく,事故発生時に出動することになる消防,警察,自衛隊員などの放射能防護対策にも言及し,社会全体で防災,減災にとりくむべきことをていねいに説得している。
本書の目次を見ただけで読むことを敬遠する人は,すでに「正常性バイアス」のワナにおちている可能性がある。正常性バイアスとは,危機に直面したときに危機そのものを認めず,事態は正常だととらえてしまう心理のことである。災害心理学において重要なポイントだそうだ。そのほかに「集団同調性バイアス」,「パニック過大評価バイアス」がある。本書では,韓国テグの地下鉄火災事件がわかりやすい例にあげられているが,いずれも東電原発事故でもみられたし,自分でもおもいあたるところがある。
また,本書では,いわゆる「自主避難者」の行動が,社会にとっていかに重要な役割を果たしているかを客観的に説明しており,この認識は市民も共有しなければならない。
第 6 章 行政はいかに備えたらよいのか では,兵庫県篠山市 (ささやまし) の原子力災害対策検討委員会のメンバーとしての経験から,行政の原子力防災・減災の具体的な実践例や提言が書かれている。原発推進または反対のいずれの立場の人であっても,この課題は避けられないはずである。
本書のように,柔軟に,あるがままの現実を見て課題を発見する立場は大切であり,市民の自発的判断力と行動力がそれを実現していく道であろうとおもわれる。
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目次
まえがき
第 1 章 原発事故とはどのようなものか
第 2 章 あらゆる災害に共通する「命を守るためのポイント」がある。
第 3 章 原発災害への対処法
第 4 章 放射能とは何か,放射線とは何か,被曝とはなにか
第 5 章 放射線被曝防護の心得
第 6 章 行政はいかに備えたらよいのか(兵庫県篠山市の例から)
あとがき
(A5 版,271 p.)
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『原発からの命の守り方
――いまそこにある危険とどう向き合うか』
2015 年 10 月 17 日 初版発行
著者 守田敏也
発行所 株式会社海象社
http://www.kaizosha.co.jp
ISBN978-4-907717-43-8
定価 1,380 円(税別)
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記事のアドレス http://starsdialog.blog.jp/archives/45831461.html